ツール・ド・ジャパンの想い出 〜西湖(後編)〜

西湖のレース当日は猛烈に寒かった記憶が有る。気楽な遊び気分が吹き飛んだ。



この寒さの中、選手は半袖単パン、運営の人達は額から汗し、身体からは湯気を上げて走り回っている人も居た。空はあくまで青くそれが冷たさを倍増していた様に思う。これもこれからの話になるが、以後、道路の雪掻きをしながら走路を整備し、選手諸君に少しでも快適に走って欲しいと言う主催者の努力、思い入れを知る事になるのである。
関係者が如何に選手が走り易く、怪我をしない様に走れるかに注ぐボランティア諸氏の活動は追々紹介して行くけれど、この西湖のレースを見学するだけで運営の大変な事、レースに注ぐ皆の熱い思いを知る事が出来た。
生半可な気持ちでこのイベントを続けて行く事は出来ない、それだけ選手も含めて自転車ロードレースと言う新しいスポーツに賭ける熱意を実感する事が出来たの事にも感激した。と同時に、もしかするとこれは本当にやりがいの有るスポーツかも知れない、年々大きく充実させる事が出来るかも知れないと信じられたほど関係者の努力は目を見張るものだった。

当日のエピソードを一つ紹介しよう。役員の一人が「ボートが有るので乗ってみませんか」と声を掛けて来て驚いた。湖だからボートからレースを見る事が出来るのかなと思ったが、周囲を見回してもそんな場所が有りそうにも見えないし、猛スピードで走る自転車に手漕ぎボートで追いかける事など出来そうもないのにと不審に思いながらも一人乗せて頂いた。ご存知の方も多いと思うが西湖の周回ロードは曲がりくねっていて、スピードを出しながらコーナーを回るハンドル操作は結構難しい。(後に知った事)競争となれば鍔競り合いも有ろうし、接車も有る。おまけに道路幅は狭いと来れば考えられるのは落車、とまでは考えたが湖上に出て驚いた。モターボートも一隻待機している。
「湖に飛び込んで来る選手も時にはいるんですよ」との事、それも飛び込んで来るコーナーは決まっているんですと言う。まさかと思いながら暫く見ていると、驚いた事に本当に湖に落下して来る選手がいた。一瞬の事なので詳細には見ていなかったが、ペダルに足を乗せたまま文字通り「落下」。高さは3メートル位か?、自転車を抱え込んで落ちて来る様にも見えたが確かではない。悲鳴は聞こえなかったので多分予想の範囲での出来事だったのだろう。

競技後、審判員に聞いてみると「落下の危険が有る」と注意はするそうだが一人くらいは落ちて来るそうである。勿論直ぐに救命ボートに救い上げられたがこの寒いのに氷の様な水に飛び込んで来る。そこまで予想して準備する事にも感心したが、もっと感激したのはこの落下がもし小石でも踏んで起きたのでは、と審判が審判車を降りて道路の周囲を調べたと言う事である。
こうした陰の努力を見る度にM部長とは「何とかメジャーな競技に育てたいね」と話し合ったのが西湖見学の大きな収穫であった。ちなみにこの「西湖」のレースは最後まで開催されたステージである。
by CS-R_SUZY | 2004-09-23 23:45 | SUZY パパの回顧録
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